ケルンボード

平和園

名古屋市昭和区広路通6丁目1−3
(川名駅から西へ2〜3分)

更新日:2021.02.18

ここの店はお前の気に入るであろうから行ってみるが良かろう、何せカウンターの机がナチュラルにななめに傾いているのだ、というようなオススメをいただいて、なんのこっちゃと思いながら一度お店に入ったところ、それ以来ひと月に一回は来店するようになった中華料理店の名前が「平和園」と言います。

平和園は川名の大きな通り沿いにある、奥に細長い(おそらく二階がご自宅の)お店で、ご夫婦だろうか高齢のお二人が切り盛りしていらっしゃる。
カウンターの机はたしかにななめに傾いていて、どうしてなのかはよくわからない。カウンターの他には小さなテーブルもあるのだけど、その幅はみじかく、奥のテレビに向かって座ると右肘が壁にがつがつ当たり、物を食べるときにとても気をつかう。
のだけれど、まあ、そんなことはどうでもよい。ここは平和園なのである。

冬の平和園には、入口入ってすぐのところに円柱型の石油ストーブがでんと置かれていて、その上の網にはみかんの皮らしいものがこんがりと焼かれていたりする。
その石油ストーブのわきをすり抜けて席につき、ビール会社のロゴの入った小さなグラスに水をいただいて、壁に貼られたメニューから、もやしラーメンと餃子をおかみさんに注文。すると、おかみさんがカウンターの中にいるおやじさんにむかって「もやしラーメンと、餃子」と声をかけ、おやじさんが静かに頷く。
おやじさんは、餃子のタネの入ったタッパからコテみたいなものを使って、皮の中心にタネをほいほいと乗せていく。カウンターの中に戻ったおかみさんがその皮をちゃっちゃととめて、餃子を焼く用のフライパンにじゅうじゅうと乗せて、じっとその様子を見る。そのあいだにおやじさんはもやしラーメンのもやしをじゃっじゃと炒め、麺をゆがき、手早くもやしラーメンが完成、湯気の立ち上るラーメンの器をカウンター越しに受け取る。

もやしラーメン400円(!)

レンゲでしょうゆ味のスープをひとくち、うすい卵色の麺をひきあげてすする。
ほっそりとしてまっすぐな麺は、ふんやりと柔らかくて、弾力とかコシなどとは程遠く、するするお腹に落ちていく。麺の上にはチャーシューが3切れほど乗っていて、これがめちゃんこ美味しい。長い時間煮込まれたのだろうなあ、というチャーシューはほろほろと柔らかく、いいこんがり具合で、美味しい味をスープに溶かしている。
そしてもやしはシャキシャキと、一部分はしんなりと、麺にうまいこと寄り添っている。
美味しいな〜とラーメンに没頭していると、奥で餃子が焼きあがったのが見える。おかみさんが皿に焼き上がった餃子をずらっと並べて、静かに片づけをしているおやじさんに「焼けた」と声をかけ、おやじさんがその皿を持ってカウンターに置いてくれる。

タレのお皿に、平和園と薄く書いてある

餃子のうすい皮はぴっちりとじられていたり、とじられずにゆるっとひらいていることもある。
それを箸でつまんでたれにつけて、一口で頬張れば、つるつるした皮の口当たりがよく、中のタネはふやふやとほどけていく。餃子をつまんで、ラーメンをすすって、スープを飲んで、テレビのニュースをぼんやりと眺めて、そのニュースに対しておかみさんの時々こぼす感想に耳をかたむけたりしながら、ゆっくり過ごしたらいつの間にかラーメンも餃子も食べ終わってしまって、ああ食べ終わってしまったなあと思いながら、不思議な充足感に満ちた心地になる。
平和園のお客さんは、ひとりでやってくる人が多くて、おおむね静かに食べて、静かに帰っていく。
今日は自分が最後の客だったので、食べ終わってからちゃちゃっと会計に向かった。おかみさんが「七百円になりました」と合計金額を教えてくれるので、財布から小銭を取り出しておかみさんにお金をお渡しし、「どうもありがとうございました」と声を張って見送ってくれるおやじさんに頭をさげて、店を出る。
ストーブとラーメンであたたまったところから店の外に出ると、一気に寒さと冬の暗さにつつまれる。平和園を振り返ると、小さくなったあかりの中で二人が片づけをしているのが見える。

平和園は、毎年夏になる直前から長いお休みに入ります。暑さに対する体力を考えてのことらしいです。秋になって店に「◯日から営業を再開します」という貼り紙が貼られると、とてもほっとします。

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