ケルンボード

リトルパフ

名古屋市瑞穂区東栄町8−17−2シャトレ瑞穂1F
(瑞穂区役所駅から東に数分)

更新日:2021.03.06

『食べること』が好きなのだけれど、「好きな食べ物は何ですか」という問いには腕を組んで長時間天を仰いでしまう。
目の前に出されたものはだいたい「美味しいです」と食べてしまうし、世の中にあるものはだいたい『美味しいもの』と思っているし、『美味しいもの』が好きであるし、要するにだいたいのものが『好きな食べ物』でありまして、とゴニョゴニョ尻すぼみになってしまう体たらくで、「好きな食べ物は◯◯です!」「私は◯◯には目がないんですよ!」と力強く答えられる人がとても輝いて見えるし、その食べ物の素晴らしさについて語られると「ああ、まったくその通りであるなあ」と簡単に感化され、翌日からその食べものが自分にとっての『特別好きな食べもの』になってしまっていることも、ままあるのであった。

瑞穂区役所から山崎川に向かう途中にあるリトルパフは、オムライスとドリアの専門店である。
「ここは美味しいよ」という具合に舌なめずりをしている、大きな目の黄色いほっぺたをしたワニ(恐竜かもしれない)が目印だ。
木製のドアを開けると、小柄な優しい顔をしたおかみさんが出迎えてくれる。奥のキッチンでフライパンをにぎるおやじさんは、どことなくリリーフランキーさんに似ていて、あのワニを描いたのはおやじさんなんですよ、と言われたら大きく頷いてしまうと思う。実際はどうなんだろう。

このワニ(?)がパフなんだろうか

席について、メニューを眺める。オムライスは、デミグラスソース、クリームソース、変わったところではスープオムライスなどもあるし、ベースと具を選んで自分好みのオムライスを作ることもできる。また、ドリアも10種類ほどあってどれも美味しそうなのだけど、今日はチキンオムライスを注文。
壁に飾られた山の写真などを眺めて待つ。山の写真は、眺めていると素直に山の近くにいるような気分になるのでいい。
金曜の夜ということもあるのかお店にはちょっと浮かれた空気が流れていて、奥の席の高齢のマダムは連れの方との会話のなかで何度か『香水』の有名な一節を歌っていたのだけれど、「香水のせいよ〜」と、どうにも字足らずなのであった。

しばらくしておかみさんが、オムライスと、ミニサラダと、玉子スープを運んできてくださる。テーブルに垂直にあたる照明が、オムライスの黄色い肌をつやつやと光らせ、その真ん中にじゃんと流されたケチャップの赤色も、とても鮮やかに浮かんでいる。
とても美しい造形のオムライスにスプーンを入れる最初の瞬間の高揚と緊張感は、何度味わっても特別なものですね。
外側はプツリと内側はとろりと切り分けられる玉子のなかから、ケチャップ色のごはんと、玉ネギと、コーンと、ごろりとした鶏肉があらわれる。それをスプーンにまとめて口に運び、一口目はしずかに目を閉じてその楽しい美味しいものを味わうのが、オムライスです。

まばゆいですね

学生時代、オムライスが好きで好きでたまらないという友人がいて、その様子を見ているうちに自分にとってもオムライスが『特別好きな食べもの』になったのでした。
思い返せば自分にとっての『特別好きな食べもの』はほとんどが誰かの好きな食べもので、誰の影響も受けていない、純粋に自分が好きな食べものは一体なんなんだろう、と考えてみると、『黒焦げになる寸前まで焦がした食パン』とか『とけるチーズをお皿に乗せてチンしたやつ』などに行き当たったので、自分が人から影響を受けるたちでよかった、よかったよとしみじみ思う。
オムライスは美しい造形を保ったまま、スプーンを入れるたびに左からどんどんと無くなっていく。残りがこれだけです、何分の何です、というのがひと目でわかるのがたまらない気持になる。いつまでも食べていたいのだけど、そういうわけにもいかないものなあ。お皿に残ったケチャップソースときれいにまとめて最後の一口。ケチャップソースの、きゅんとする酸味が好きです。
向こうの席、運ばれたオムライスに「おいしそ〜!」と歓声をあげる二人組を見て、よかったねえと心の中で声をかけてお会計。おかみさんは深々とおじぎをして、にっこりと笑ってくれる。

車のひとも安心、リトパ専用駐車場

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