ケルンボード

喫茶シャモニー

名古屋市瑞穂区雁道町3丁目1
(滝子通2丁目バス停から南に10分くらい)

更新日:2021.02.11

瑞穂区の北西、淡色の建物が並ぶ雁道商店街のはずれにとつぜん現れる、ペカペカの緑色した屋根とレンガの壁。
朝八時過ぎに到着すれば、そこにはすでに何台か自転車が停まっていて、窓ガラス越しにお客さんが歓談しているようすを見ることが出来る。
シャモニーを初めて訪れたのは数年前、ふらふらと近所を散歩していたときにバッタリ「なんてかっこよい建物なんだろうか」とびっくりしたことを覚えている。おもてにメニュー表などはなく、「やってます」という札がかかっているのを確認してドキドキしながら入店すると店内はまたさらにかっこよい広々とした空間。
白い壁に黒々した木がわたされて、様々な深さの赤茶色のレンガの装飾、床は組んだ木板の茶色にワックスがつやつやして、椅子は赤色の布張り、細い柱には細かな彫りがはいっており、目移りしてしまう。
そして、犬です。三角形の上が少し垂れた耳の、牛乳をたっぷりそそいだカフェオレのような毛並のさくらちゃんというその高齢の犬が、店内をかちゃかちゃと爪音を鳴らして闊歩している。

どの壁を見てもかっこよい

それから何年か経って今朝、久しぶりにシャモニーへ行こうと思い立ちお店に向かった。
朝日の差し込む扉を開けると、目の前にものすごく高齢になった、木綿豆腐みたいな質感のさくらちゃんがいるではないか。さくらちゃん!再びさくらちゃんと会えたことに舞い上がる自分に近寄ったさくらちゃんは、フンフンとにおいを嗅いで、ゆっくりと去っていった。
店内は高齢のお客さんたちでにぎわっていて、最近受けた健康診断の話やら、冬は暖かい部屋でテレビ見ているのが幸せという話やら、雁道のどこかの御宅の息子さんの話やら、色々な会話が聞こえる。奥の方の席について、シャモニーにはメニューがないので、とりあえずホットコーヒーを注文。
さくらちゃんは桃色のバンダナを首に巻いて、ゆっくりながらも軽い足取りで店内のお客さんがたの机を順繰りにまわっていて、なんというか、プロの看板犬という風格である。
扉がひらいて、また新たな高齢のお客さんがやってきた。さくらちゃんはすぐさま出迎えに向かい、知ったお客さんとわかったのか、くるりと丸まったシッポを振っている。

玉子サンドかトーストのモーニング

そのあとのお店の会話で、ちかごろさくらちゃんがあまり調子がよくないこと、ものをあまり食べないこと、もうすぐ17歳ということ、を知る。
人間にしたらもう90歳近いというさくらちゃんは、それよりも若い高齢のお客さんたちに「あんたが元気ないとわたしも元気なくなっちゃうわ」と声をかけられたり、「これ食べんか」とパンを乗せた手をのばすお客さんに鼻を近づけたり、それに対して「動物だっていろんな機嫌があるだで。私もそうだけど、なんにも食べたくない時もあれば、30分くらいして急に食べたくなる時もあるもんね」といたわりの言葉をかけられたりしている。
ひととおりお客さん巡りをしたさくらちゃんは、毛糸のベストを着させてもらい、日のよくあたる玄関に腰をおろした。

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